風が強すぎる。

 

今日は親戚(はとことそのばあちゃん)に会いに行った。久しぶりに見たはとこの顔は元気そうで、なんかほっとした。男前だったし。

 

ばあちゃんの方は全然外に出ていないようで少し認知がアレになっていて心配だった。でも、相変わらず口が悪くて男勝りで、そこは変わってなくて安心した。

 

はとこのばあちゃんの家はでっかでっかタワマンの最上階だ。この世の全てを一望できるベランダには大きな犬の置物が2個置かれていた。

 

うちはうちのばあちゃんと母も連れて会いに行ったのだが、あの歳になってくるともはや会話内容が健康と死の故人の話だけになってくる。もっと明るい話をせえよと思ったけど、明るい話がそもそもないのだろう。会うのも久々だし。

 

だいぶ話をしてさあ帰るぞとタワマンを出た時、直結しているアーケード街の方から大きな声が聞こえてくる。

「狂人(くるんちゅ)」だ。

 

 

 

春だ。

 

 

 

今日は雨も降って風も強かった。気温もそこまで高くない。

でも確かにそこは春だった。わたしが春を感じてしまったのだから。大きな声で喚きながら、風を殴り倒し、光を背負い投げする狂人(くるんちゅ)。

 

その据わった目の奥に、目眩がしそうなほど眩しい太陽の暖かさを感じた。