シット・アーティクル・ワン・ハンドレッド

「100記事めをキミと迎えることができて嬉しいよ。乾杯。」

 

シャンメリーの注がれたグラスを鳴らす。据えた匂いのするパタ○ニアのジャケットを羽織って微笑む目の前の女性は、いつにも増して綺麗だ。

 

「本日のお料理はペニシリウム風マイコトキシック・パスタでございます」

 

ウエイターがそう告げると、目の前に暖かな料理が並べられる。真緑のふわふわとしたソースがかかったパスタは独特の臭気を放っていた。

 

「こうして今日という日を迎えられることができたのも、キミという女性がいてこそだよ。ありがとう。いただきます」

 

彼女の目を見つつ感謝を伝え料理を口に運ぶ。マイコトキシックというだけのことはあり、苦味とも酸味ともとれるえぐ味のような、一癖も二癖もある味が口内に広がる。まるでそれは五週間ほったらかしたミカンであり、10日間手をつけなかった炊飯器の中身のようであった。芳醇とは言い難い湿気た不快感のある味わい。これがたまらない。

 

その不快感を拭うため、シャンメリーを一口飲む。うまい。マスカット味のシンプルなそれは程よい炭酸で身も心もリフレッシュされる。パスタのえぐ味と合わさって、コウモリ傘とミシンの手術台での出会いのような、見事なマリアージュ。これこそ、食の真の感動だった。

 

食事を終えて会計をする。彼女に格好悪い姿は見せられない。

 

「カードで」

 

胸元から『ピカチュウ』のカードを出す。自分の山札から基本でんきエネルギーを選び、カードにつけて山札を切った。

 

「ありがとう。またキミに会えるのを楽しみにしているよ。おやすみ」

 

彼女をタクシーに乗せ、僕たちは今日という日に別れを告げた。

 

ロマンチックな1日は、こうして幕を閉じた。僕は今日という日を忘れないだろう。

 

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2日後、僕は遺体で発見された。そりゃあんなパスタ食べたらね(笑)